映画「繕い裁つ人」
南 洋裁店。頑固な二代目店主が、“人生を変える一着”を仕立てます。
1月31日(土)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
中谷美紀
三浦貴大
片桐はいり
黒木華
杉咲花
中尾ミエ
伊武雅刀
余貴美子
イントロダクション
心にやさしい明かりを灯す感動作『しあわせのパン』と、第38回モントリオール世界映画祭特別招待作品となった『ぶどうのなみだ』で、日本はもちろん世界でも高く評価されている三島有紀子監督。前作、前々作で食と人をテーマにしてきた三島監督が、今度は着ることと生きることの切っても切れない関係を、温かさの中にも厳しさと切なさを込めた眼差しで描く、最新作が完成した。
「いつか仕立て屋の映画を作りたい」と願ってきた三島監督が、池辺葵の大人気コミック「繕い裁つ人」(講談社「ハツキス」連載)と運命的に出逢った。「主人公の南市江がミシンを踏む横顔が頭から離れなくなり、市江の生き様に強烈に寄り添いたくなった」と語る三島監督の強い想いのもと、「衣」というテーマと仕事に生きる女性のスピリットが融合した、唯一無二の世界観の実写映画化が実現した。
主演は、『嫌われ松子の一生』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ数々の栄えある賞に輝き、『ゼロの焦点』『阪急電車 片道15分の奇跡』でも高い演技力を絶賛された中谷美紀。「“夢を見るための洋服”を大切に真摯に繕う市江の姿に惹かれました」と語る中谷は、市江の凛としたプロフェッショナルの顔と、ぶっきらぼうで口は悪いがまっすぐな心を丁寧に演じきった。
市江の仕事に心を奪われる藤井には、『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した三浦貴大。また、圧倒的な存在感を放つ個性派女優の片桐はいり、『小さいおうち』でベルリン国際映画祭銀熊賞に輝いた黒木華、TVドラマ「夜行観覧車」で注目された期待の新鋭・杉咲花、さらに中尾ミエ、伊武雅刀、余貴美子らのベテランまで充実した顔ぶれがそろった。
脚本は『永遠の0』の林民夫。衣装は『春の雪』『空気人形』などの映画から舞台「ベッジ・パードン」、そしてTV「あまちゃん」まで鮮烈な印象を残す伊藤佐智子。物語の舞台となる神戸の街を中心に兵庫県でオールロケを敢行、異国情緒漂うエレガントな街並みが、スクリーンを彩る美しい洋服を引き立てる。
市江のように、好きなものとだけ、シンプルに生きる。覚悟もいるけれど、それ以上の喜びが、あるだろうか? どうぞ、あなたも「南洋裁店」にお立ち寄りを。もっと人生が愛おしくなるはず。
ストーリー
神戸の街を見渡す坂を上ると、その店はあった。「南洋裁店」という小さな看板が掛けられた、古びた洋風の一軒家。店主の南市江が作る服は、いつも即日完売。すべて昔ながらの職人スタイルを貫く手作りの一点ものだ。
神戸のデパートに勤める藤井は、市江にブランド化の話を持ち掛けるが、まるで“頑固じじい”のような彼女は、全く興味を示さない。一代目である祖母が作った服の仕立て直しとサイズ直し、あとは先代のデザインを流用した新作を少しだけ、市江はそれで満足だった。南洋裁店の服は、世界で一着だけの一生もの──それが市江の繕い裁つ服が愛される、潔くも清い秘密だった。
だが、自分がデザインしたドレスを作りたいはずだという藤井の言葉に、市江の心に封印してきた何かが揺れ動く──。
プロダクションノート
「慣れ親しんだ神戸で撮影したい」という三島監督のたっての希望で、『繕い裁つ人』は神戸を中心に関西でオールロケとなった。監督もプロデューサーも助監督も関西出身ということで、2013年末より、正月休みを利用してロケハン開始。しかし、市江の南洋裁店を筆頭に、この映画の世界観を表現する建物や場所を見つけることは決して容易ではなかった。それでも監督のなかに妥協の二文字はなく、ギリギリまで粘る。特にメイン舞台となる南洋裁店のロケ場所が決定したのは一番最後、撮影開始のまさに直前だった。
南洋裁店のロケ場所として選ばれたのは、神戸から少し離れた兵庫県川西市にある歴史的建造物の旧平賀邸。明治時代にそこに住んでいた平賀氏は海外から染め物の技術を取り入れ、日本の繊維技術に功績を残した人でもあるそう。偶然とはいえ『繕い裁つ人』には縁を感じさせる建物だった。また、南洋裁店の前にある設定の美しい坂道も監督のこだわりのひとつ。監督がリクエストしたのは、抜けに海が見えて背景に山が見える坂道。しかも、監督が理想とする傾斜も必要なうえに沿道は住宅街がいいというおまけ付き。本当に見つかるのか──。監督の要望と合致する坂を見つけ出してくる制作部もまた職人だった。
雑貨店は神戸市東灘区にあるNAIFS(ナイーフ)・カフェは神戸市中央区にある珈琲店サンパウロ、実在するお店を借りて撮影している。ほか、結婚式のシーンは旧グッゲンハイム邸、夜会の会場は神戸どうぶつ王国(旧神戸花鳥園)、図書館は監督の母校である神戸女学院の図書館で撮影。いずれも映画の世界観にぴったりな申し分のないロケセットではあったが、その背景には苦労もあった。たとえば、旧グッゲンハイム邸はすぐ目の前が線路で、数分おきに通る電車の音との戦い。花鳥園はその名のとおり鳥が多く生息している場所でもあり、こちらは鳥の鳴き声との戦い。録音部の苦労は想像を絶するものだったが、妥協せずにいいものを撮りたいという監督と、スタッフの情熱と粘りが、不可能を可能にした。
三浦貴大の演じる藤井が市江の作る洋服に惚れ込みブランド化を説得するように、この映画のもう一人の主役は“洋服”。ファストファッションで溢れる現代において、オーダーメイドの洋服がどれだけ温かであるか、どれだけ素晴らしいか。職人の生き方を描くと同時に一着の洋服を大切に着るという奥深さを伝えるのもこの映画に流れるテーマ。その重役を担うのは数多くの舞台や映画の衣装デザイナーとして活躍する伊藤佐智子氏。
彼女もまた監督がいつか一緒に仕事をしてみたいと思っていた職人のひとりである。「衣装の相談をしたときに中谷さんの口から伊藤佐智子さんの名前が出てきて、ああ、中谷さんはこの映画の世界観を深く理解してくださっているんだって、嬉しかったんです」と監督は語っている。ちなみに、中谷と伊藤の出会いはNHKドラマ「白州次郎」だった。
今回、映画に登場する半分以上の衣装をデザインしている伊藤がこだわったのは、やはり市江の仕事服。深く鮮やかなブルーの色がとても印象的で、市江の一部のようでもあるが、あの色は伊藤が市江を演じる中谷のためにわざわざ布を染めて作っている。丈の長さにも市江のキャラクターを反映。市江は先代の祖母が遺した洋裁店にとらわれて生きている女性。そのとらわれ感と、「お客様が主役」という市江のスタイルを出したいという監督の願いに応じる形で、あえてあのブルーの衣装はくるぶしが隠れるか隠れないかほどの長さになっている。
また、藤井がどんなに説得してもブランド化を承諾する気のない市江の頑固さ、入り込む余地のなさも衣装に表れている。市江の衣装のキーワードとなった“トラディショナル&レトロ”は、衣裳部だけでなく美術部とも共有するキーワードとなり、布やボタン、裁縫道具、デザインブックやお客様のファイルなど、すべてに活かされている。
キャスト
1976年生まれ、東京都出身。93年に女優デビューし、映画『壬生義士伝』(02)で第27回日本アカデミー賞優秀助演女優賞、06年には映画『嫌われ松子の一生』で第30回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞ほか、数々の映画賞を受賞。近年は舞台にも活躍の場を広げ、11年に初舞台「猟銃」で第46回紀伊国屋演劇賞個人賞、第19回読売演劇大賞女優賞、13年の「ロスト・イン・ヨンカーズ」では第21回読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。主な映画出演作に『阪急電車 片道15分の奇跡」(11)、『源氏物語 千年の謎』(11)、『リアル~完全なる首長竜の日~』(13)、『清須会議』(13)、『利休にたずねよ』(13)、『渇き。』(14)など多数。14年10月に開催された第27回東京国際映画祭では、映画祭の「顔」である“フェスティバル・ミューズ”に抜擢され、2015年には、世界的にヒットしたフランス映画「アメリ」を手掛けたプロデューサーによる1910年代後半からフランスで活躍した画家、藤田嗣治を題材にした日本とフランスの合作映画「FOUJITA」(小栗康平監督)への出演も決まっており、国際的な活躍をみせる日本を代表する女優。
1985年生まれ、東京都出身。10年に映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』でデビュー。主な映画出演作に『SPACE BATTLESHIPヤマト』(10)、『乱反射』(11)、『麒麟の翼~劇場版・新参者』(12)、『わが母の記』(12)、『あなたへ』(12)、『ふがいない僕は空を見た』(12)、『許されざる者』(13)、『キッズ・リターン 再会の時』(13)、『永遠の0』(13)、『リトルフォレスト 夏/秋編』(14)、『太陽の坐る場所』(14)などがある。公開待機作に『サムライフ』(15)、『リトルフォレスト 冬/春編』(15)、『種まく旅人~くにうみの郷』(15)、『マンガ肉と僕』(15)、『ローリング』(15)、『進撃の巨人』(15)など多数、今注目の若手俳優の一人である。
1963年生まれ、東京都出身。数多くの映画、舞台、TVドラマで活躍、06年の映画『かもめ食堂』のミドリ役、13年のNHK 連続テレビ小説「あまちゃん」の通称あんべちゃん役などで、多くのファンを獲得、唯一無二の存在感を放ち続けている。近年の主な映画出演作に、『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』(09)、『非女子図鑑』(09)、『なくもんか』(09)『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』(11)、『R100』(13)、『小野寺の弟・小野寺の姉』(14)などがある。15年春に『ジヌよさらば~かむろば村へ~』が公開予定。著書に「わたしのマトカ」(06)、「グアテマラの弟」(07)、「もぎりよ今夜も有難う」(10)がある。
1990年生まれ、大阪府出身。NODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」(10)のヒロインオーディションに合格し、中村勘三郎と野田秀樹との3人芝居で娘役を射止めた。『東京オアシス』(11)にて映画デビュー。
『おおかみこどもの雨と雪』(12)で声優に挑戦、『シャニダールの花』(13)では映画初主演を果たし、14年には『小さいおうち』で 第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を 日本の女優として史上4人目の受賞を 果たし大きな話題となった。NHK連続テレビ小説 「花子とアン」(14)の好演が記憶に新しい、 今一番注目の若手女優である。その他の映画出演作に 『草原の椅子』(13)、『舟を編む』(13)など。 15年には『幕が上がる』、『ソロモンの偽証』 が公開。
1997年生まれ、東京都出身。多くの映画、舞台、TVドラマで活躍、14年11月に発表された「日経トレンディ:2015年の顔」に早々選ばれる等、大注目の若手女優。主な出演作に「夜行観覧車」(13/TBS)、「名もなき毒」(14/TBS)、「MOZU」(14/TBS・WOWOW)などドラマのほか、映画出演は『イン・ザ・ヒーロー』(14)、『思い出のマーニー』(14・声の出演)など。15年には『愛を積むひと』が公開予定。
1949年生まれ、東京都出身。67年ドラマ「高校生時代」で俳優デビュー。数々の作品に出演する一方、ナレーターとしても活躍。近年の主な映画作品に『最後の忠臣蔵』(10)、『さや侍』(11)、『キツツキと雨』(12)、『僕達急行 A列車で行こう』(12)、『藁の楯』(13)、『奇跡のリンゴ』(13)、『二流小説家 シリアリスト』(13)、『終戦のエンペラー』(13)、『利休にたずねよ』(13)、『黒執事』(14)、『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』(14)などがある。
1946年生まれ、福岡県出身。中学時代に渡辺プロダクションに所属。翌年リリ一ス した「可愛いベイビ一」が一世を風靡し、一躍スターの座を射止める。その後、歌手、女優として数々のテレビ番組や舞台で活躍し続けており、書道や水泳など多彩な分野でも活躍中。主な出演作に「おとなの夏休み」(05/NTV)、「ペテロの葬列」(14/TBS)、「ほっとけない魔女たち」(14/東海テレビ)などのほか、映画『人生、いろどり』(12)等がある。
1956年生まれ、神奈川県出身。オンシアター自由劇場・東京壱組を経て、映画・TVドラマへと活動の場を広げる。08年、第63回毎日映画コンクールにて田中絹代賞を受賞。『おくりびと』(08)、『ディア・ドクター』(09)、『あなたへ』(12)で、第32・33・36回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞するなど、受賞歴多数。近年の映画出演作として、『食堂かたつむり』(10)、『孤高のメス』(10)、『RAILWAYS~愛を伝えられない大人たちへ』(11)、『麦子さんと』(13)、『武士の献立』(13)などの他、三島有紀子監督作品『しあわせのパン』(12)にも出演している。
スタッフ
大阪市出身。18歳からインディーズ映画を撮り始め、神戸女学院大学卒業後、NHKに入局。「NHKスペシャル」「トップランナー」など、〝人生で突然ふりかかる出来事から受ける、心の痛みと再生〟をテーマに一貫して市井を生きる人々のドキュメンタリー作品を企画・監督。11年間の在籍を経て、独立。以降、助監督をやりながら脚本を書き続け、『刺青~匂ひ月のごとく~』(09)で映画監督デビュー。12年に映画『しあわせのパン』でオリジナル脚本・監督をつとめる。
14年10月には『ぶどうのなみだ』を発表。第38回モントリオール世界映画祭のワールド・グレイツ部門に招待された。映画監督としての仕事に加えて、TV向けドラマ作品や小説、エッセイの執筆等、幅広い活動で、優しい雰囲気の中にスピリッツの効いた作品を手掛けるクリエイターとして評価を受けている。
著作に小説「しあわせのパン」(ポプラ社)、小説「ぶどうのなみだ」(PARCO出版)がある。
91年、「サザエさん」で脚本家デビュー。主な映画作品は『ルート225』(06)、『フィッシュストーリー』(09)、『ゴールデンスランバー』(10)、『うさぎドロップ』(11)、『道~白磁の人』(12)、『みなさん、さようなら』(13)、『藁の楯』(13)、『永遠の0』(13)、『白ゆき姫殺人事件』(14)など。『夫婦フーフー日記』、『予告犯』が15年公開予定。
ファッションクリエーター。一枚の布から始まる表現形式において常にそのコンセプチュアルワークに高い創造性を求め、自在な感性に依るオリジナリティ溢れたデザインを提供することを信条とする。舞台、映画の衣裳デザインはもとより、商品開発、井上陽水コンサートツアーではアート・ディレクターとしてセットデザイン、衣裳等ヴィジュアルシーンを99年より担当している。映画『春の雪』(05)、『空気人形』(09)他。舞台「人形の家」(08/デヴィット・ルボー演出、シアターコクーン)、「ヴォイツェク」(13/白井晃演出、赤坂ACTシアター)、「秋のソナタ」(13/熊林弘高演出、東京芸術劇場)他。また、宮沢りえとの共作『STYLE BOOK』や『日本の染と織』、『SARAÇA VISION』など著書も多数。
09年、Kissマンガセミナーにて「落陽」でデビュー。その後、Kiss PLUSにて「繕い裁つ人」の連載を開始し、現在はハツキス(ともに講談社)にて連載中。 他作品に「サウダーデ」(講談社)、「どぶがわ」(秋田書店)、「かごめかごめ」(秋田書店)。現在、web漫画やわらかスピリッツにて「プリンセスメゾン」連載中。
映画を拝見するまで、
自分の漫画と切り離して映画を拝見できるか不安もあったのですが、その心配は杞憂でした。
拝見した映画は、 映画「繕い裁つ人」として美しい世界観が構築され 原作とは関係なく映画の世界に浸りました。
優しく シリアスで、そして遊び心あふれる素敵な映画です。
ストーリーはどこか曖昧で 強さ 弱さ 葛藤や滑稽さ 不安定さや不完全さがあって
感じ方を見る側に委ねてくれている余白を感じました。
ぜひぜひたくさんの方に見ていただきたいです。
1995年デビュー。14年4月発表の最新シングル「グロテスク feat. 安室奈美恵」を含めシングル36枚、最新アルバム『JAPANESE SINGER』含めオリジナルアルバム8枚をリリース。歌謡曲は勿論のことR&B、POP、ROCK、HIPHOP、HOUSEなど多種多様なジャンルに傾倒し、数多くのヒット作品を輩出。累計3,000万セールスを記録する。日本人男性ソロアーティストとしては初めてのMTV UNPLUGGEDの出演や、スティーヴィー・ワンダー、ジョン・レジェンド、ロバータフラッグ、美空ひばり、坂本九、草野マサムネなど時代/ジャンル/国境を越えたコラボレーションを実現。デビュー10周年を記念してシングル・コレクションをリリースし、男性ソロアーティストで史上3人目の200万枚を突破するなど、記憶と記録に残る活動を続ける。13年、98年から続けてきた平井堅のライフワークであるアコースティック編成で聴かせるコンセプト・ライヴ“Ken’s Bar”が開店15周年を迎え、精力的にLIVEを展開するなか、14年に入ると4月2日には約2年ぶりとなるNEW SINGLE「グロテスク feat. 安室奈美恵」をリリース。豪華なコラボレーションと人間の本性を炙りだした衝撃的な歌詞で俄然注目を集め大ヒット。さらに5月にはコンセプト・カヴァーアルバムの第3弾「Ken’s BarⅢ」をリリース。来年デビュー20周年を控える中、クリエイティブなトライを続けるその動きからますます目が離せない。